
昨年7月、北戸蔦別岳から戸蔦別岳に登る途中、晴れ上がった空の下に、まさに日高山脈の最高峰と思わせるどっしりとした幌尻岳が、目の中に飛び込んできました。この姿を見てしまった以上、登りたくなるのは自分だけではないでしょう。あれから1年経った今年7月、満を持して登ることになりました。ただ、この山も主に3本あるルートのどれを取っても、長い林道歩きや沢登り、そして急な尾根歩きが待っています。今回は一番ポピュラーな、額平川を遡り、山の中に建つ幌尻山荘をベースとしたルートを取る事にしました。ポピュラーとはいえ、雨で増水すると危険なのは当然で、我々が登る2週間ほど前、単独行の登山者が、増水したこの川で流される事故がありました。去年の「カムエク」の件もあるので我々も慎重に天気を見ながらの出発です。
林道終点の駐車場にはたくさんの車で溢れ、この山の人気の高さを知らされます。3日分の荷物を背負い、暑い日差しの中、長い林道を歩き、額平川を沢靴に替えて遡ります。概ね膝程度、所によっては腿位の深さの川を、流れに負けないように約20回程度の渡渉を繰り返し、出発から約5時間、やっと山荘に到着です。山荘はたくさんの登山者で満杯なので、近くにテントを張りここをベースとします。濡れた衣類を乾いた物に替え、食事を済ませたあとは明日に備えて早々と就寝。夜中雨が降る音がして、ちょっとドキッとしましたが、朝起きてみると川の増水はそれほどでもなく安心しました。と言うのも、当初は山荘から夏道を登る予定でしたが、今回同行した後輩の提案で、額平川の本流から、幌尻岳の北カールに抜ける直登沢を登る事になったのです。
さて、どんな難所が待ち受けているのか、わくわくしながら、沢に向かって出発です。はじめは傾斜の緩い沢も次第にその角度を増し、圧倒的な水流が切り立った岩場をゴウゴウと音を立てて落ちていきます。やがて高さ15mほどの大きな滝が現れ、所々ザイルを固定しながら、草付きの斜面を大きく高巻き突破。次々現れる小滝の水しぶきを浴び、びしょ濡れになりながらも、わりと皆さん余裕の表情です。おなかがすくのも忘れ、5時間近く登り続けると、段々水量も細くなり、そろそろ沢も終わりが近づいてきました。なんとなくほっとしたような、もう少し登りたいような、そんな気分で歩いていくと、そこはもう手をつかなくても良い、平らな北カールの底でした。ガスに包まれたカールは一面エゾツツジなどの高山植物で覆われ、なんとも幻想的な景色が広がりその中で大休止。その後笹の急斜面を熊のようにワサワサと登り、登山道に出て小雨の降る中、12時半頃、念願の幌尻岳山頂に立つ事ができました。
景色は何も見えませんが、今回のようなバリエーションコースを無事登り終えたことで大満足です。ちなみに、下山後山荘の管理人さんによると、今年このコースを登った女性は参加者のMさんが初めてだったそうです。めでたし、めでたし。
北海道最高峰の旭岳や、百名山で有名なトムラウシ山を代表とする表大雪の東側に位置する東大雪には、石狩川の源流となる石狩岳や音更山、そして鋭い山稜を持つニペソツ山など、魅力的な山々が揃っています。どの山も奥深く、また表大雪のなだらかな尾根とは対照的な、鋭角的な稜線が登山道となっており、中でもニペソツ山はそのアルペンチックな山容が、登山者の心をくすぐります。
3年前の8月、そのニペソツ山を目指しましたが、あいにくの雨で、頂上には登ったもののどんな所を歩いているのかさっぱり分からず、ちょっと消化不良の登山となりました。昨年9月、やはり東大雪のユニ石狩岳に登った時、すっきり晴れ上がった空に、突き刺すような形のニペソツ山を見て、再度挑戦することに決めました。
6月28日夕方、登山口の広場にテントを張り今夜の宿泊地とします。午後4時頃、続々と登山者が下山してきますが、みなさん疲れた様子の中にも、満足そうな表情で、喜んで帰って行きました。我々も翌日の天気を願い、シュラフの中にもぐりこむことにします。
朝4時、眠たい目をこすりながら出発の準備。天気はまあまあ良さそうです。針葉樹の生い茂る尾根をゆっくり登っていくと、朝日がこれから登る尾根の上部を明るく照らし、今日の晴天を約束してくれます。2時間ほどで稜線上に出ると、ふもとは雲海で埋まり周辺の山がその上に浮かび上がり、登山道上にはコザクラやチングルマなどの花が咲き、目を楽しませてくれます。次第に傾斜は緩くなり、ガレ場を越えて台地の上に出た瞬間、待ちに待ったニペソツが姿を現し、思わず声があがります。しばしそのどっしりとした迫力のある姿に見とれますが、まだまだ先は長いのです。気合を入れて、大きなアップダウンを超え、最後の急登を、息を切らしながら登り、出発から約5時間、頂上は足下となりました。トムラウシ山や十勝連峰、石狩岳などパノラマが広がり、その展望は一級品。またこの時期はイワウメやシャクナゲなどの高山植物も多く咲き、あの険しい山容とは似合わない花の山でもありました。
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